|
|
|
|
|
|
|
■燕子花と花菖蒲
カキツバタ、ハナショウブ、アヤメ。
違いがわかるでしょうか?
すべてアヤメ科アヤメ属。
昔から日本人はアヤメ属の植物を「あやめ」と読んできました。
似ていて甲乙つけがたく、判断に迷う場合のたとえに「いずれアヤメかカキツバタ」と言われるように、この3種を見分けることは慣れないと難しいものです。
アヤメの仲間ではもっとも湿地を好むのがカキツバタ。ハナショウブ、アヤメの順に陸へあがっていきます。
ハナショウブとカキツバタの違いは、主に葉で見分けることができます。
ハナショウブは葉の中央にはっきりとした葉脈を持っています。
また、ハナショウブは基部が黄色くなりますが、カキツバタは花弁の中央に白色の条が入ります。
ややこしいことに、端午の節句のしょうぶ湯につかう菖蒲はサトイモ科。葉の基に芳香があり薬草としても用いられるもの。
もともと中国から伝わった風習が、5月5日に御所の各棟の屋根に2本の菖蒲を挿すという宮中行事となり、一般に広まって、軒によもぎや菖蒲を吊るし邪気を祓う「端午の節句」が生まれました。
その後、菖蒲が「尚武」に通じるとされ、男の子の健康と出世を願うようになったようです。
アヤメ科の花菖蒲はノハナショウブを原種として、品種改良された純国産の園芸種。サトイモ科の菖蒲とは全く別種ですが、葉姿は非常に良く似ています。
|
|
カキツバタの名前の由来は、古くからその花の汁をすりつけて衣服を染めたので「書き付け花」からきているといわれています。
またその花びらが、燕が飛ぶ様に似ていることから「燕子花」と書くのだとも。
昔の日本では身近な水辺に見られた植物だったようで、万葉集や伊勢物語のなかにも詠まれ、古典植物のひとつに数えられています。
在原業平が現在の愛知県知立市八橋を訪れたとき、そのあたりの花の美しさに旅情をなぐさめ、カキツバタの5字を詠み込んだ秀歌を覚えている方も多いでしょう。
から衣 きつつ馴れにし つましあれば
はるばるきぬる たびをしぞ思ふ
また、江戸時代前期頃の日本画や工芸品の題材にもよくとりあげられ、現代の私達がもっとも良く目にするものが、五千円札の裏面に描かれている、尾形光琳の屏風絵「燕子花図」です。
晩秋まで季節に応じていける燕子花。自然の姿を見つめながら、水盤に映してみたいものです。
|
|
|
|
|
|
|